英国留学--イギリスで英語を勉強しませんか--留学体験談--ロンドン滞在雑記

31歳女性。2007年秋にロンドンへ1ヶ月の短期留学をした際の体験をエッセイとして公開。

ロンドン滞在雑記

 

始まりは思いつき

 3年間の仕事が終わった。当初はすぐにでも次の仕事を探して働くつもりだったが、いざ無職になってみると急に旅行に出かけたくなった。私は一人で海外旅行をしたことがない。そうだ、せっかく仕事で色々な経験したのだから、自分で自分の旅を企画、実行してみよう。初めての一人旅だから行ったことがある国、言葉が多少わかるイギリスにしよう。いざ調べてみると、ツアー旅行というのは朝から晩まで団体行動でひとり旅とは言えない、一方個人旅行で観光をしても現地の人とどれだけ触れ合えるのか、と疑問が出てくる。そこで1か月ホームステイをしながらロンドンの美術館巡りをしようと思いついた。調べてみるとホームステイというのは基本的に語学学校とセットになっていることがわかってきた。そこまで分かれば後は、語学学校を決め、ホームステイ先の希望やら、レベルチェックテスト、海外送金、ステイ先へのお土産といった一通りの準備をこなしていくだけだ。仕事を辞めて二十日後、10月21日、成田を飛び立った。

変わらない街、変わりゆく人々

一軒目のステイ先 ジュウリッシュ地区は閑静な住宅街

二軒目のステイ先近くの自然公園 "ハムステッドヒース"

 イギリスへの渡航は98年、01年、そして今回の三度目。10年前と比べてもイギリスのローテクは相変わらず。顕著なのはトイレの水の流れが悪いこと。必ずトイレットペーパーの端が流れずに残る。この10年、日本のトイレは自動で洗浄したり、近づくだけで蓋が開いたりするまでになったのに。何に関してもローテクで十分という考え方。入国翌日が登校初日の語学学校で、水に漂うトイレットペーパーを見つめ、製造業にはつくづく向かない国だと溜息をついた。
 中規模の語学学校は、オフシーズンのためか230人程度の生徒が在籍。そのうち20人前後が韓国人。80年代に日本でもブームのように留学やワーキングホリデーの話題があったが、今の韓国人留学生に対してその既視感を持つ。ちょっと裕福な家の、20〜25歳ぐらいの子たちが1年ぐらい語学留学に来ている。そして韓国料理屋でアルバイト。結構学校でも群れているし、住んでいるフラットも同じ沿線に固まっている。かといって英語がまるで効果があがっていないかというとそうではなく、さすがに半年以上いるので、結構喋る。ヨーロッパ勢は3週間からせいぜい12週間ぐらいのステイなので、長く居る者同士で固まるのは仕方ないことなのかもしれない。これほど多くの留学生がいるのは、韓国経済が悪くない証拠なのだろう。一方日本人は5、6人ほど。30歳前後の女性がほとんど。それ以外の国では、スペイン、トルコが多く、次にスイス、ドイツ、ハンガリー、スロベニア、ポーランド、フランスなど。東欧系が結構いるなあと思っていたら、帰りの飛行機で隣の席だったグラスゴー在住日系企業のビジネスマンによると、最近は東欧からの出稼ぎが多いそうだ。英語産業はイギリスの一大外貨獲得産業ということか。
 その側面から見るとイギリスは同じ島国でも、日本にはないコスモポリタンな社会である。イギリス人と一口にいってもインド系、アラブ系、中華系とお顔立ちも様々。現に最初にホームステイしたお宅は70歳のホストファザーがポーランド出身のユダヤ系。家もユダヤ教の人たちが住んでいるジュウリッシュ地区にあり、豚肉、甲殻類は一切召し上がらない。三週間目からステイしたお宅の63歳のホストマザーは、カリブ出身のニューヨーカーでイギリス人と結婚し移住した方。山羊のミルクが大好きで、家に入るとまず、独特の苦みと酸味のある山羊のミルク臭が鼻につく。その臭いに慣れるのには少し時間がかかってしまった。

さすが!アート教育

 今回の目的である美術館には頻繁に通った。ただ絵を観に行くのではなく、短期滞在という利点を生かしてガイドツアーやワークショップ(講習会)に参加した。最も印象に残ったのは、ナショナルギャラリーでのデッサンのワークショップイベント。紙と鉛筆、椅子も美術館側が用意してくれ、予約なしで無料参加できる。オックスフォード大から招かれたチューターが展示室の本物の中世絵画を前に、男性モデルに絵の通りのポーズをとらせ、どのような骨格をしているか、どのような効果があるかなど骸骨の模型を使って理論的に説明。説明の熱心さに加え、本物の絵を前にデッサンをするという臨場感に興奮する。デッサンの時間は正味20分ぐらいと短く、出来上がったものに対するコメントもなく描かせっぱなしではあるが、隣り合った参加者とお互いのデッサンを見せ合い楽しむ。その日は3つのデッサンワークショップを梯子した。 この外にも、美術館の人が絵を説明してくれるガイドツアーは主要な美術館では毎日開催されており、リスニングの勉強を兼ね度々参加。特にテートモダンは、展示テーマごとにガイドツアーが4種類もあり、そのうち3種類に参加する機会を得た。どのガイドツアーも大きな声で身振り手振りを交え、ユーモアたっぷりに話す。他の来館者に気を配って小声で話す日本の美術館との大きな違いを感じた。

言わずもがな・・・イギリスの食

 イギリスと言えば食の不味さで有名である。不味いというのは正確ではなく、味覚の違い、食に対する欲求の違いと考えるべきだろう。二週間ずつ滞在したホストマザーはどちらも料理上手、好きを自負していた。朝はコーンフレークと薄切りスライスのトーストと紅茶のみ。昼は、スーパーで買ったサンドイッチやサラダボウルをかきこむ。語学学校の教師が巨大なサラダボウルを水回りで立ったまま召し上がるのを何度か見かけた。一軒目のステイ先では夕飯付きだったが、毎日ワンプレートディッシュ。チップスもしくは皮つきジャガイモのオーブン焼きと肉もしくは魚のグリル又はソテー。そして解凍グリンピース又はクレソンなどの緑のもの。味付けは基本的に出来上がったものに自分で塩胡椒をする。学生時代にもホームステイをしたことがあるが、毎晩冷凍食品だったことを考えると、確かにここのホストマザーは料理好きだったのだろう。食器にしても、頑丈なだけが取り柄のプレート。来客用に高級なティーセットは揃えているが、普段はひたすら地味な生活であった。それがイギリス人全般に当てはまるのか、ポーランドからイギリスに渡り、貧しい7人兄弟の生活から、ロンドン郊外に一戸建てを所有するに至った生活感から滲み出たものなのかはわからない。70歳のホストファザーが「ロンドンでタダなのは、空気だけだ」と笑って、自らズボンの裾上げをしていた姿は印象的だった。しかしたぶん、風土として質素なのだろう。
 というのもロンドンの物価は東京を抜いて世界4位。さらにイギリスはほとんどの物品に17.5%の付加価値税がかかる。単純に手取り年収が低いなのだと思う。映画館、ショッピングセンターといった娯楽も東京に比べると規模が小さく、アミューズメントパークなども見かけない。地下鉄で周りを見渡せば、靴やバッグなどかなり使い込んだものを使っている。セカンドショップに行けば、つま先もかかとも擦り切れた靴が15£程度で各種売っている。それにしても、物価が高い上に1£=250円という円安だったこともあり、私にはすべてにおいてコストパフォーマンスが低く感じられた。昼にカフェでランチをすれば、薄切りトースト、塩辛いソーセージ2本と薄いハム2枚、焼いたトマトのスライス2枚に紅茶で4£。1,000円も出せば、丸の内で寿司ランチが出来るではないか。しかも抹茶アイスまでつく!と思うと、とてもお金を出す気にはなれない。しかたないので、セインズベリー(マークス&スペンサーより格下のスーパー)の一番安いサンドイッチ(1.5£前後)で済ますか、2軒目のステイ先は夕飯がつかなかったので、昼をギリギリまで我慢し、夕方4時頃に夕飯も兼ねて外食をするという貧しい食生活であった。

どこに行っても「人」が好き

 イギリス人の人柄に大いに支えられた。まず、行きの便で隣の席だったイギリス人ビジネスマンが、ステイ先まで車で送ってくれた。今思い返してもかなり親切な方だ。 ステイ先を移る際も、私の余りに重いスーツケースを色々な人が顔を真っ赤にしながら持ってくれた。バスで隣り合った女性と共に乗り換えのために全力疾走したこともあった。新聞には毎日のように犯罪の記事が並ぶ。夜の街を歩けば、ドラッグを売りつけてくる輩もいる。先進国の都会が抱える闇は当然存在する。しかし、実際に生活している人々には都会に似合わない人情味も確かに残っている。バッグを腕に抱え込み警戒しつつも、見知らぬ人の厚意に思い切って飛び込んでみる。イギリス人ではないが、ひょんなことから知り合ったアメリカ人で黒人のDさん。彼との接点は、そんな自分の思い切りから出来た縁かもしれない。彼にはSOHOのホモセクシャルバーや、駅名にもなっているSwiss cottageの伝統的な古いパブに連れて行ってもらった。後でHPを拝見し、日本でのキャリアも含めかなり有名なダンサー&振付家だとわかったが、彼の活躍のフィールドから私はあまりに遠いところで生活しているので、その素晴らしさをよく認識していなかった。三週間が過ぎた週末の夜、「このロンドンで君のスピリットとマインド、どちらが解放された?」とDさんに聞かれたとき、「実際、どっちも解放されていない。私はこの三週間、絶えず奮闘していて、自分を出したいのに英語が出来ない、常に次の仕事のこと、語学学校での人間関係のこと、今を楽しまなきゃという気持ちが交錯している。」と吐露した。「僕たちはこうして英語で仲良くなっているじゃないか!もっと自分に素直になればいい。」と言われたときは、カチカチに固まった頭に生温かい何かが流れ込んできた。 今振り返れば、国内外どんな場所でも人間関係を築いたり、新しい環境に馴染むには時間はかかる。焦る必要なんてまるでなかったのだが、短い期間で何が出来るかと必至だった。結果として、枯渇した体から新たなエネルギーが湧いてきたような気がした。

ホリデーは終わった!

 11月20日午後4時半。「成田に着いた。Anyway、晩御飯はどうする?」と家人にメール。勤務中のはずなのに、すぐに返信があった。「今日は遅くなると思う。でも、家で食べる。」・・・晩御飯を作らねば!ヒースローから12時間のフライト、成田から自宅まで2時間弱。帰るなり、スーツケースを置いてすぐにスーパーに買い物に出かけた。泥のついた下仁田葱を選びながら、半日前はロンドンにいたなんて、冗談のようで一人笑ってしまった。

テートモダンギャラリーのエントランスにあるルイーズ・ブルジョアの「ママン」。六本木ヒルズでも同じものを見ることができる。テムズ川越しに聖ポール寺院が見える。

(31歳・女性。2007年10月〜11月に、ロンドンの TTI School of English に4週間)



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